働き方改革関連法案のうち労働時間法制の見直しの施策として、平成31年4月から、労働時間の客観的な把握の義務化と長時間労働者に対する面接指導等が強化されることになります。
今回の労働安全衛生法の改正では、医師による面接指導が確実に実施されるようにするため、労働時間の把握について明文化され、義務化されました。
「事業者は、第66条の8第1項又は前条第1項の規定による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第1項に規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。」(改正安衛法66条の8の3)
現在の労働時間の把握については、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」や通達により定められていますが、管理監督者や裁量労働制の適用者は労働時間の把握が必要な対象労働者に含まれておりませんでした。
しかし、今回の改正では高度プロフェッショナル制度の適用者を除いたすべての労働者が対象となる為、管理監督者や裁量労働制の適用者についても労働時間の適正な把握が必要となります。
また、長時間労働者に対する面接指導については、
「事業者は、その労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいう。以下同じ。)を行わなければならない。」(安衛法66条の8)
とされておりますが、今回の改正により医師による面接指導の実施が義務付けされる要件が、以下のとおり変更となりました。
(現行)
①1か月の時間外労働(1週間で40時間を超えた時間)が100時間を超えていること
②疲労の蓄積が認められること
③自ら申し出ること
(改正後) H31.4.1施行
①1か月の時間外労働(1週間で40時間を超えた時間)が80時間を超えていること
②疲労の蓄積が認められること
③自ら申し出ること
また、研究開発業務従事者や高度プロフェッショナル制度の対象労働者に対しては、1か月の時間外労働(1週間で40時間を超えた時間)が100時間を超えている場合には、自己申告がない場合でも、面接指導が必要とされています。(改正安衛法66条の8の2、改正安衛法66条の8の4)
もちろん、研究開発業務従事者や高度プロフェッショナル制度の対象労働者であっても、上記3つの要件が全て当てはまった場合には面接指導を行わなければなりません。
このように平成31年4月以降、会社は裁量労働制が適用される人や管理監督者も含め、すべての従業員の労働時間(時間外労働時間等)の状況について、より一層、客観的かつ適切な把握を行い、従業員の健康管理に注力することが求められることとなります。
参考
労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
「産業医・産業保健機能」と「長時間労働者に対する面接指導等」が強化されます
(厚生労働省リーフレット)